次世代機と新たなジャンル

任天堂Wiiが発売され、またまた大きな騒ぎになってました。先日のソニーPS3のときもすごかったですが、新しいハードウェアはこんなにもニュースになるのかと、いつも驚いています。
ちょっとここで、元ゲーマーの視点から、ここ十年近くのゲームについて考えていることをまとめてみます*1。テーマは「ハードとジャンル」です。

ゲームハードとゲームソフトは切っても切り離せません。かつてハードのスペックが弱かった頃ファミコンとか、スーパーファミコンの頃)「スペックのよいハードが出れば、ゲームは面白くなる」と無条件に信じられていました。確かに15年前私たちはゲームが出るたびに「今度のゲームは容量が何メガだ」と話題にしました。容量が大きい=ハード的に優れているソフトが、面白いソフトだと思っていたのです。ネオジオが唱えた「100メガショック」などというフレーズはそれを象徴しています。実際、それは間違っていませんでした。ハードの進化と共にソフトは進化し、面白いゲームがたくさん作り出されました。
ただしそれだけだと、「サターンの後に出たドリームキャストはなぜ失速したか」とか、「XBoxはスペック的にはパソコン並なのに、なぜヒットしなかったか」とか、「そもそもそれならスペック的には高かった3DO*2は即退場になったのか」という点を説明できません。

これらの要因はセールスや開発環境、といった面に大きく依存するかと思いますが、私はゲーム性という観点だけに注目し、「敗北したゲーム機は、そのマシンならではのゲーム作りができなかったのではないか」と分析します。より私の言葉で言うと、「新しく出たゲーム機が、新しいジャンルを提供できたかどうか」だと思うのです。

ハードの進化は新しいジャンルの登場と密接に関わっています。古くはシューティングゲーム中心だったアーケードマシンは、画像処理が向上し、大型キャラクタを表現することができるようになった結果、ストリートファイター2のような格闘ゲームジャンルを生み出すことになりました。Super-CDROM2によって飛躍的に大きな容量が保存できるようになった結果、音声とビジュアルでストーリーが進むときめきメモリアルが誕生、ギャルゲーム全盛時代が訪れました。プレステは知名度セガサターンに劣っていたにもかかわらず、優れた三次元画像処理を生かして、グランツーリスモみんなのゴルフのような膨大な処理でリアルさを追及したゲームを次々にヒットさせました。
対して、セガサターンドリームキャストXBoxはどうだったか。厳しく言えば、既存ゲームの延長のようなゲームしか作れなかった。譲って考えても、新たなハードから新たなジャンルを作り出せなかった。もちろん開発者達の努力はあったし、新たなジャンルとして提案された作品もありましたが、ヒットには結びつきませんでした。その結果、販売低迷やハードからの退場という憂き目にあったと思います。
とにかくここで強調しておきたいのは、「新たなハードが新たなジャンルを作ること」そして「新たなジャンルが熱狂を生み、ゲーム業界を活性化させること」です。ヒットしたマシンはそれができた。ヒットしなかったマシンはそれが出来なかった。そういうことだと思います。

さて、近年の状況を見ると、任天堂DSが大ヒット中です。DSでは「脳トレ」や「常識力」といった、これまでにないジャンルのゲームがこれまでにないファン層を牽引しているように見えます。そして任天堂Wii。リモコンコントローラーというデバイスを用いて、新たなジャンル作りに挑戦しているように見えます。実際、任天堂のエラいさんは「十字キーとボタンというデバイスは我々が開発したものだが、これを破壊し超えるものを作る」とインタビューで答えています。Wiiは新たなハードを生かしたこれまでにないゲームを見せてくれる可能性があります。
それに対してプレステ3は、これまでのところ、従来のゲームの画像がきれいになっただけ。ゲーム性という意味で新しい提案をしていません。これも私の自説である「ジャンルの寿命は10年」という言葉を使えば、もしかしたらプレステのお家芸であるリアルタイム処理のゲームはそろそろ退場のときが近い、のかもしれません。


ジャンルについてはもう少し書きたくなったので、もう一回書こうと思います。

*1:以前もドリームキャストが出てきたときもいろいろ評論をしていたりしまして、今回もやってみるかなと思った次第です。

*2:ここを読む人ならよくご存知かと思いますが、松下から発売されたゲーム機です。ヒット作が全くなく、すぐに退場と相成りました