同人誌は好きだから書くのか、それとも売れるから書くのか

冬コミ準備中の赤木です。今風呂に入りながら、何となく思ったことを書いてみます。

作家同士の話のネタに、「同人誌を書くモチベーションは、好きだから書く*1のか?それとも売れたいから書くのか?」というものがあります。ここでいう「売れたい」は、金銭的なものよりも評価的なものを指すことがほとんどです*2。つまり、たくさん売れて多くの読者から「○○って作家はすごい」「面白い」という風に思われたいということです。

さて、どっちでしょうか?答えは、「両方」です。そんな曖昧な……と思われるでしょうが、実際どっちか片方だけってないと思うんですよ。私はプロ作家にほとんど知り合いがいないので、アマ作家の話をしますが、アマ作家、特に私の知り合い連中(私含めて中堅ぐらいの作家が多いかな?)は両方思っています。
そりゃ、好きなものを書きたいです。自分が思った世界観を作品にするのはドキドキするし、自分の好きなキャラが思うように作中で動く様は、まさにこれだから同人誌書いてるんだ!という醍醐味でもあります。
一方で、アマ作家も「売れたい」という気持ちを持っている。前述したとおり、それは金銭という意味よりは評価という意味でです。きっと多くの同人作家が、自分の書いた本が大人気になり、多くの人から褒められ、自スペースの前に長大な行列ができることを夢見たりするでしょう。たくさんの部数が売れれば自信がつくし、いい本を書けたとしてもあんまり……だった時は何でかなぁと下を向いてしまいます。
とまぁそんな具合に、多くの同人作家は「自分の書きたいものを書いて、それで大人気を博したい」と思っている訳です。ただ、先ほど「両方」と書きましたが、その割合については、これは千差万別だと思います。マイナージャンルで書いている人はどうしても売上部数については予想できてしまいますが、それでもそこで熱心に書き続けている人もいますし、他方「人気があるから、多くの人に見てもらえるから」と人気ジャンル本を書く人もいます。これはどっちがいい悪い、という問題ではなく純粋にその作家の考え方一つです*3

で、私なんですが、私自身も「自分の書きたいものを書いて大人気を博したい」と強烈に思っていたりします。「このジャンルが、このカップリングが流行ってるし」とかそういう理由で作品作りをしたことは一度もない。私の発刊してきた作品(特にコミケットで出した作品)は全て「読者にこのテーマを伝えたい」という命題に挑戦してきたのものです。
一方で、売れたい。というか評価されたい。これも強く思っています。私は以前ある作品のチラシに「本棚にこの作品をしまうとき、何も思わずしまうのではなく、何か胸に残る、そういう作品であることを望む」的なことを書いたんですね。誰かに私の考えを伝えたい。読者の思い出に残る本を書きたい。これは、コミケットに参加するようになった九年前からずっと変わらない思いです。その思いを達成出来た時もあるし、できなかったときもあるし。
ただ……私自身の書きたいことがどれぐらい読者の読みたいものと一致しているかというと、特に最近は自信がありません。まー二次創作といいながらオリジナルみたいな作品ですし、その世界観を受け入れられない人がいるのは致し方ないかなと思っています。熱心に応援して下さる人の存在はすごく嬉しい一方、新シリーズになって以降あまり関心を持っていただけなくなった人もいて、「俺のやり方がまずかったんだろうか。技術的に実力不足だろうか」といつも思っています*4
ま、そんなことを言いつつも、客観的に見れば相当多くの方にいつも購入していただいてる(つまり評価していただいてる)訳ですから、それに関しては満足するところですし、応援して下さるファンの方に対しての感謝の気持ちは尽きることがありません。私が今こうして冬コミの準備をしているのも、ホント皆様のおかげです。ありがとうございます。

なんでこんな事をいきなり書き出したかというと、今冬コミに向けて過去作品を読みまくっているからなんですね。
当時も今と変わらず、「こういうストーリーで本当にいいのか?」「ファンの人たち引くんじゃないか?」「原作と全然違っていいのか?」とすごく悩んでいました。読み返して、その頃の悩みが新鮮に蘇ってきたんです。なんで、筆を執りました。
気になるコミケット情報については、〆切後(つまり12/10以降)に広報します。よろしくお願いします。


  

*1:ここで言う書くは、書くも描くも含みますが以降書くで統一

*2:多くのアマ同人作家(ってこういういい方も変なんだけど本来)は金銭的なことはあまり追及しません。私の回りにはスペース代と酒代が出れば嬉しいなって人が多いです。よく同人誌知らん人は「同人って儲かるんだろ?」と思っているようですが、圧倒的大多数の作家は儲かるどころか身銭を切って同人誌を出版しています

*3:売上を度外視して自分の好きなジャンルで活動する作家が求道的で立派な作家、売上や評価を重視する作家は商業主義的な作家、という空気が同人界にあるのは感じています。ただ私自身は、別に偉い偉くないはないと思うんですよね。だいたい、商業主義批判とか今時聞かないし。

*4:赤木作品は熱心に応援して下さる方と、受け付けられないと思う方の両極端で、とりあえず買っておこう的なライトファンが少ないように思ってます