新刊奮闘記① 邂逅編

今回もまぁ、色々あったもんだ……。

25日。本文を入稿した直後。
パソコンの前で放心しながら、私はここ二ヶ月を思い出していた。

既報の通り、新刊「三奈子の手帳〜エースの条件」を入稿。これで、4/2川崎に本が出せることになりました。今回から数回に分けて、ここまで明かさなかった作成レポートを掲載します。


まず、さかのぼること二ヶ月前。1月のサンシャインクリエイション
前回、イラストをお願いしたJH君は今回イラストをお願いできないことになった。私自身大変残念な気持ちだったが、本を出すためにはいつまでも残念がってもいられない。後任のイラストレータを探さないといけない。
私の知り合いに声をかける、という手を一番最初に考えた。これまではずっとそうしてきた。ただ、今回は幅を広げる、という意味を込めて、少し自分で探してみることにした。そんな中、jimmyさんの手伝いで参加したサンクリマリみてをやっている人、または創作系で腕のいい人はいないか……私はそんなことを考えながら、スペースを眺めていた。
「一冊いかがですか? 無料です」
そんな時、声を掛けられた。私は何の気なしに、無料と差し出された本を受け取った。
すぐに、「上手い」と思った。
赤木は絵に関しては素人である。ただ作成する方としては素人だが、見る側としては十年近く色々アニメや文庫や同人誌を見てきた身。感覚として、いい悪いぐらいは分かる。その基準からいけば、文句なしに「上手い」だった。
ついでに言えば、向こうから声を掛けてもらったのも、印象に残った。もし仮に絵をお願いするとしたら、人間的にもいい人であって欲しいと思っていた。同人誌を買っても、何も言葉を出さない人もいる。そういう人とはあまり上手くやる自信がない。ちゃんとコミュニケーションが取れる人がいい。
その後も色々見て回ったが、結局無料で受け取った本の人以上に印象に残る絵&人には出会えなかった。私は、終了近くなってから、もう一度その人の場所に向かった。すると、ちょうど帰り支度の真っ最中。もう少し遅かったら危なかった……声を掛けて、他の本を売ってもらう。この時はまだこちらの名前も目的も告げてないし、向こうの名前もどんなジャンルでやっているかも知らなかった。
これがぺってん紳士さんとの、最初の出会いだった。


家に帰ってから、他の本も見る。他の本もクオリティが高い。俺の見る目に間違いなし……
私はこの本の作者のぺってん紳士さんにメールを送った。
マリみて文庫本を書いているが、イラストレータを探しています。受けてもらえませんか……送信ボタン。
この時は、「まぁダメだろ」と思っていた。これまでも数度、この手のメールを送ったことがある。だが、いずれもダメだった。よく考えると当たり前で、見ず知らずの相手から知らないジャンルを依頼されて、すんなり受ける人は少ないと思う。少なくとも私はちょっと戸惑う。だから今回も諦めつつのメールだったが……
翌日、メールの返信が。なんと、まだ細かいことを書いていないのに、ぺってん紳士さんからは「受けさせて頂きます」とのお返事。パソコンの前にガッツポーズ。本当に、嬉しかった。安心した。これで、本が出せる、と。


後日、ぺってん紳士さんと打ち合わせ。ぺってん紳士さんは思った通り気さくな方で、話し合いはスムーズに進む。
同人誌では、ゴーストハントという小説と漫画のシリーズの二次創作をやってらっしゃり、その筋ではなかなかの有名人とのこと。ショップのカレンダーの絵の仕事を請け負ったこともあり、なんか大物だな、よく私の話を聞いてくれたな、と思った。
こちらからは依頼したい絵の内容を伝える。マリみては数度アニメを見た程度で、あまりご存じないとのこと。いえいえいいんです、いつもそうでしたから! こちらとしてもそれは想定済。資料をお見せしたり、冬に出版した本をお渡ししたりして、話を進めた。
そして、正式に依頼。これで、一番の問題は解決した! さあ、後は俺がやるだけだ!


だが、苦悩の新刊作りは、まだまだ続く。