新刊奮闘記② 苦悩編

イラストの件も確定したことだし、さて、今度は私の本文だ……と意気込んでパソコンに向かう私。当初は前回同様、原稿用紙に書いてからやろうかと思ったが、時間の都合で最初からパソコンで書くことにした。
今回の新刊は、築山三奈子が一年生の時の話。紅薔薇のつぼみ水野蓉子(当時)が小笠原祥子を妹にする、という情報をキャッチした新聞部。入部したての三奈子もそれに加わって奮闘し……という粗筋になっている。そういうわけで、今回の本は蓉子がたくさん出てくる。
今回の題材は、単に「三奈子が一年生の春頃に起きたと思われる原作に沿った事件」を考えると、蓉子と祥子の件がぴったりだから、じゃあこれにするか、程度の考えで決めた。
だが、実際に書いていると思いのほか楽しい。それはやっぱり蓉子のおかげだ。以前日記に書いたとおり、赤木は蓉子ファンである。「結局委員長タイプのきりり美人が好きなんだな俺」と当時はずいぶん思った*1。時は流れ、蓉子があまり原作で登場しなくなると、好きなキャラも少し変わった*2。またいつまでも蓉子や聖人気に頼っていてはいけないとも考えるようになった*3。なったが……やはり私は蓉子が好きなようで、筆も軽やかに進んだ。
しかし、原稿が完成し、見直しの段階で、強烈なプレッシャーを感じるようになった。
「蓉子はこんな状況の時、本当にこういう受け答えをするのか?」
「蓉子は新聞部の出方に対して本当にこういう考え方をするのか?」
「蓉子は悩むとき本当にこういう仕草をするのか?」

などと考えるようになったからだ。
前作でも原作キャラは結構出したが、はっきり言えばチョイ役で、出さなくてもストーリーを展開しようと思えばできた。ファンサービス程度のつもりだったが(原作キャラが出てこないマリ見て小説なんて面白くないですからね)、その時でも、今回と同様、キャラクタの雰囲気を壊していないか、悩んだ。
だが今回の蓉子は、前回の祥子や祐巳をはるかに超える登場量である。
いや、量だけでなく質もだ。今回は蓉子がオリジナルキャラと掛け合うシーンが数カ所登場するが、ストーリーを盛り上げるために重要なシーンばかり。ちょっとキャラを出しておけばよかった前回とは全く違い、蓉子自身がストーリーの中核になっているのだ。蓉子の描写に大きな違和感がないか、ファンを白けさせてしまわないか……プレッシャーは前回の比ではない。蓉子が人気キャラなのも、重圧に拍車をかける。
水野蓉子は、言うまでもなく、実在する人物ではない。だから、蓉子の人物像は、私を含めたマリ見てファンの「認識」の中にのみ存在する。
「認識」は受け止める個人個人によって違う。だが、同じ物を読んでいる以上、共通する部分も多いはず。
私はマリみてを全体を数度通して読み、気に入った巻は何度も読んだ。同人誌もよく見る。だから、私の蓉子に対する「認識」は、他のファンの「認識」とそう大きく違わないと思っている。思っているが……。
入稿し、印刷所から校正用のPDFファイルが送られてきた。これはページ送りや特殊文字が出力されているかどうかの確認用で、内容については訂正不可能*4。もう直せないのだから、気にしない方がいいのだが、本文を読み直すたびに、プレッシャーから抜け出せない自分に気がつく。


次回は、印刷編!

*1:ただし現在はこの限りであるようなないような。

*2:紅好きなのは変化無し。……おいそこ! 可南子は紅じゃねぇだろとか言うな!

*3:あるアンケートでは、好きな学年、ぶっちぎりで旧三年生が一位。聖効果恐るべし。ちなみに現二年、現一年、中三、現三年の順。現三年、人気低すぎでは。

*4:なので誤字脱字を見つけると、分かっているのに直せないもどかしさから、胃が痛くなる。