オタクブームを考える。

様々な「萌え」関連の経済効果の試算、ドラマ「電車男」のヒット、つくばエクスプレスの開通、ヨドバシカメラ秋葉原店の開店などの要素が重なっているのか、最近秋葉原とオタクブームのような現象が起きているように感じる。そんな流れの一環なのだろうか、10/9に放映されたTBSテレビの「サンデージャポン」では、秋葉原とオタク特集が組まれていた。
番組では、二十代前半のオタク二人が女性アナウンサーに秋葉原を案内しながら話が進む。メイド喫茶おでん缶、フィギアショップ、コスプレショップと、「いかにも」な地点を、二チャン用語を交えながら嬉々とした表情で紹介していくオタク二人*1。あまりのはしゃぎっぷり(もちろん、演出が相当入っていると思われるが)に頭を抱える。貴様らが嬉しそうに騒げば騒ぐほど、テレビの演出に踊らされるほど、世間はオタク層に冷ややかな視線を投げかけるということがわからんのか。
まぁそれは横に置いて、こうして全国番組に登場するぐらいなので、オタクブームが大きなうねりになっているのは間違いあるまい。長く日陰者としてこの趣味に携わってきたものとしては、隔世の感ががある。
ただそれが嬉しいことか?と聞かれれば、別に嬉しくない、という気持ちが先に立つ。と同時に、本質的なところは、どうせ世間に理解されないだろう、という気持ちもある。
これはもう十年近く前のことだが、赤木はある声優*2のまぁまぁ熱心なファンであった。彼女の歌唱力に心酔していた私は、「もっと声優の歌唱力が認められて、メジャー化するべきだ」と思っていた。当時は椎名へきる国府田マリ子がメジャーの世界に出つつある時だったため、その思いは強かった。
なぜメジャー化することにこだわったか。それは、ファンであった声優が世間に認められて欲しい、ということがあった*3。あるが、それ以上に多分、ファンである自分を世間に認めて欲しいという気持ちの方が強かったに違いない。オタクであることで肩身の狭い思いをしていた自分にとって、声を大にして、「声優のファンです」と言える世の中になることは、一つの夢であった。
今はどうか? 今はもう、そこまで熱く、声優のことを世間に認めて欲しいとも思わないし、そのファンである自分*4を世間に認めて欲しいとも思っていない。これは声優に限らず、アニメでもゲームでも同人誌でも同様である。恐らく世間は、こうしたオタク文化を本質的なところで捕らえることはないだろう*5。となれば、それが好きな我々が本質的なところで認められることはないのではないか、という冷めた気持ちがある。世間の中にあって肩身が狭いのは相変わらずで、それについて考えることも多い。だが、その中で小さな輪を作って、楽しくやっていけばいい。今では、そう思う。


なお、ここまで読んで頂いた方には、以下の記事も読んでみると面白いと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051007-00000038-zdn_n-sci
ただこの記事は、オタクという言葉を「何か固定の趣味を熱心に取り組む人」と定義しているため、「それじゃただの趣味産業の試算じゃん」と赤木は考えています。

*1:言うまでもなくPCパーツショップなどの硬派な店は全く紹介されていない。テレビとはこうして偏見を量産していく。

*2:誰のことかは、著者紹介の欄を見れば分かります。

*3:これはファンであるから、ということよりも、尊敬の念からくる気持ちであることを、HP読者諸兄には伝えたい。

*4:だいたい、二十代の声優の名前を言えと言われて、片手で数えられるほどしか答えられない自分が声優ファンであるとは思っていない。

*5:こう言い切る背景に、90年代後半の声優ブームがある。アイドル不在の時代に若手声優が随分もてはやされたが、定着することなく、すぐに消えてしまった。ついでに言えば、当時持ち上げられた声優たちも少なからず消えていった。あれは何だったのかと今でもたまに思う。