「葉桜が来た夏」紹介

最近読んだ本で面白かったものを紹介します。
夏海公司という作家の「葉桜が来た夏」という本です。

たまにはラノベでも読んでみるかと思って本屋に行ったのですが、「いかにも」な表紙の本ばかりで食指が動きませんでした。
その中にあって、いかにも感が薄く、ストーリー的にも硬派そうなこの「葉桜〜」を選んだ訳です。「電撃小説大賞選考委員奨励賞作」らしいので、電撃で受賞する作家のレベルってなどんなもんだ?という気持ちもありました。


ストーリー説明はちと難しいんでアマゾンで見てもらうとして、読んでみた感想は「すごく面白い!」でした。
近未来SFで、宇宙人(美少女型という非常にありがたい設定。でも戦闘力は異様に高い)と人間の男子高校生が反発しあいながら交流するという話なんですが、複雑な設定や背景にも係わらず、非常にすんなり理解できる。また真っ直ぐなキャラクタたちの思いが交流によって少しずつ変化していく様子がとてもよく分かり、とても感情移入できた。暗いけど、暗くない。複雑だけど、分かりやすい。読後はとてもさわやかな気持ちになれます。

タイトルの「葉桜〜」ってのは、アポストリと呼ばれる宇宙人種の少女の名前、葉桜から来ています。
この葉桜、お嬢様でプライドが高い、つう設定で、一見ツンデレ?な感じがします。ただ、単なるツンデレになっていないのがとてもよい。彼女が高飛車な背景も、主人公に感情を抱いていく過程もきちんと書き込まれていて、「必然的なツンデレ」がそこにある。普段自分が考えているキャラクタの描き方のお手本がここにあったように思いました。

複雑な設定、そこから紡ぎ出されるテーマ、絡み合う心情、激しいアクション。
それらがきちんと読み手に伝わるのは、やはり作者の基礎的技術が高いからこそ。電撃の奨励賞はやっぱり伊達ではなかった、と読み終わって唸りました。
以前日記に書いた、小説は分かりやすい文脈で伝えていくものだというものを見せてくれたような気がします。

続編もあるみたいだし、それも買ってみよう!と思いました。
ご興味あれば是非。